特選明和電機152005.08.13発売/A5size 42P/500円

illustration:Isuzu Hino

日本のみならず世界各国で今も開催されている「明和電機 ナンセンスマシーンズ展」は
2004年 初台ICCでその産声を上げた!「サバオで〜す!」と言ったとか言わないとか??

(元社長=土佐正道:兄  社長=土佐信道:弟)

 多くの明和電機ファンが正に「通い詰めた」初の大規模展「明和電機 ナンセンス=マシーンズ展」。
小綺麗で広いICCの空間が明和一色になりました。

 今まで明和電機として積み上げてきた社長の脳味噌の中身全てを吐き出したような渾身の展覧会でした。
☆魚器、ツクバ、エーデルワイス全作品の展示、自動演奏デモ、新作も発表。
☆昭和40年会メンバー、中村至男氏、三橋純氏、皆川明氏、ヲノさん、そしてさかなクン…etc、様々なゲストを招いてのトークショー。
☆荘厳で格式高くパイプオルガンもあるクラシックメインのオペラシティホールでのライブ。
☆ファンを募集して明和電機合唱団の結成。
☆頭を割るとが真っ赤なジャムが不気味に流れ出すババロア「サバロア」が目玉メニューの100Vカフェ。
☆オレンジ色の絨毯に大きな白と黒のクッションが可愛らしい明和のおもちゃを展示したノックマンルーム。
☆超合金社長。チワワ笛ワークショップ。
☆正道お兄ちゃんとのミーチ兄弟クリスマスコンサート。

 既に15年以上前の出来事ですが、こうして入力していると楽しく刺激的だった思い出がが蘇ってきます。まるで熱病にかかっていたかのような2ヶ月間でした。

■明和電機 ナンセンス=マシーンズ展 お茶の間トーク 昭和40年会 明和電機を叱る!
 昭和40年生まれという括りだけで集まった現代アート作家集団「昭和40年会」。
 リーダーは「特選10 明和電機ロンドンツアー」の中でも紹介した松陰浩之氏。メンバーは会田誠氏、小沢剛氏、パルコキノシタ氏、有馬純寿氏、そして…明和電機元社長 土佐正道氏!
 総勢6名で、お山の大将になりがちな中小企業の社長 土佐信道氏を叱る!という趣旨でした。
 このトークショーのページ制作担当は、現代アート好きで日々情報収集に勤めている日野いすゞさんに担当して頂きました。各メンバーの個性、特徴、トークのツボを上手く捉えていてそのままページを掲載したい位です。
という訳で日野さんの内容をそのまま抜粋してお届けします。

<松陰浩之が叱る!>
松陰:俺と君が確実に違うところは、君は悪人だね!
社長:悪人…
松陰:商品作るのも作品作るのも何だかんだいって私腹を肥やす為なのにそれを低姿勢でやってるのが間違ってるし、そもそもホントの芸術家というのは芸術を突き詰めれば突き詰めるほど作れなくなるもんなんだよ。
社長:バンバン作れますね!
松陰:でしょ?だから君は悪人!

社長:僕、松陰さん大好きなんですよ
松陰:村上隆より好き?
社長:!
松陰:どういうところが?

<会田誠が叱る!>
会田:明和電機はね…気に入らないよ。君らが出る前は現代美術っていうのは大体美大の油絵出て、それがちょっと機械いじったりとかビデオやってみたりね、工夫してそういうのでよかったんですよ。
社長:ビンボーくさいかんじの…。
会田:要するにさ、ファインアートの弱みにつけこんでる感じでしょ?いろんな意味で。
社長:あはははは〜
会田:明和電機の「抽象企業」の演出はアートをやっている人が大切にしている一般の人とは違った生き方をしているというロマンチシズムを潰すようで…。
社長:いや!違うな!それが美術をダメにしてるんですよ!
会田:わかってんだけどー。叱れっていうから〜。

<土佐正道が叱る??>
正道:親父が寝所潰して広島に引っ越して、学校から帰ってきて誰もいないな〜と思ったら。ふっと風呂場をのぞくと…
社長:その話をするか!
正道:トラウマなの。まだ夕方で風呂入る時間じゃないのにのんちゅん、体洗うとるんよ。
社長:ほう。
正道:ふっと浴槽見るとフタかかったままなん。フロ入ってない。で、その浴槽の上に月刊ロードショー…
社長:月刊スクリーンですね。
正道:青い珊瑚礁でやってたんだもん
ーーここで松陰氏参入
松陰:ロードショーよりスクリーンの方がエロネタ多かった。
正道:あ、多かったの?青いページなの。
社長:うわ、きっつう…。
正道:その青いページだけ所謂今でいう「R指定」ええっ?って思って…。
     お○ナニーしてるう!!! あのかわいいのんちゅんが…。

社長:変わり果てた姿に〜〜(ここの声色面白かったです)

最後は昭和40年会メンバー全員と社長のトーク。正道氏はワインを飲み干し酔っ払い、明和電機「風のピタゴラス」を熱唱。
勿論ファンも一緒に大合唱。

松陰:なるほどね。これが会田の言ってた明和ファンは気持ち悪いってやつ。
正道:ははははは。じゃ来年も良い年でありますように(開催日は11月23日でした)
社長:とっとと帰ってください!
(お客さんに向かって)みなさん大変なものを目撃してしまいましたね。。。帰りましょう〜〜。

■明和電機 東京オペラシティコンサートホール ランチタイムコンサート。 素人集団「明和電機合唱団」が社歌を歌う!
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明和電機合唱団員申込方法
入団条件
1・ 明和電機の社歌を歌える.
2・ ひどい音痴ではない
3・ 男性は黒いスーツの上下,女性は白いブラウスに黒いロングスカートを持っている.
4・ 練習会(11月30日(火)午後6時—9時 ICCにて)と当日(12月6日(月)9時からのリハーサル—本番まで)に参加できる.
募集人数
30名(練習会時に簡単なオーディションを行います)
募集要項
参加希望者は必要事項を明記の上メールまたはFAXにてお申込みください.
subject : ツクバ合唱団
本文:氏名, 年齢,性別,職業,住所,電話番号,
メールアドレス(またはFAX番号)
自己アピール(意気込みをどうぞ!)
 …時は2004年11月。明和電機、今までで最大級の展示会「明和電機のナンセンスマシーン展」で盛りに盛り上がっている時、こんな内容の募集要項がオフィシャル掲示板に告知された。
 普段は、家と会社とスーパーと保育園の間を行ったり来たり生活の、主婦Sの目はギラリ!と光った。その目の中には、既に子と旦那の面影は、全く無かった…。
 「平日の9時からリハ!、これなら!子を保育園に預けてから行けば十分間に合う!しかも、お迎えも余裕で間に合う!これは!これは!明和が私の為に立ててくれた企画に違いない!、出るしかないっ!私が出ないで誰が出るんだっ!、」
 主婦Sは募集要項を見て直ぐにメールで応募した。
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↑当時の文章をそのまま載せました。明和電機が東京オペラシティでコンサートをするにあたり、格調高さを出すためのオプション?として、合唱団員を募集したのです。
 明和電機と同じステージに立てる!しかも世界的に有名な音楽家も出演する格式高いオペラシティの舞台に立てる!
こんなチャンスは100年生きたとしても1回あるかないかの出来事です。当時の私は2才の子がいることもすっかり忘れて…はいないけど、ちょっと見ないふりしてましたwww。

 応募したのはいいんですが!
 今だから言えますが、練習会11月30日はベビーシッターまで頼んで行く気満々だったのに!。子どもってわかるんですよね〜。ハハの気持ちが自分に向いてない事が。昨日まで元気モリモリだったのに、その日に限って怪我はするわ微熱はだすわ。私は泣く泣く練習会に行けない事を連絡し、ベビーシッター会社にキャンセルの電話をし、すでに準備万端の白ブラウスと黒ロングスカートを涙目で眺めたのでした…

 ところが30人募集のところ、フタを開けてみたら20人弱の応募だったらしく、社長より「どうせ唄えるでしょ?当日来れそうだったらおいでって言っておいて」というありがたいお言葉を頂き、参加できる事になったのです。
 今になってよくよく考えると「練習会に来なかったくせに当日だけ来るなんて!」と顰蹙なのに、当時の私は参加出来る喜びで頭がいっぱいで、そんな回りの方達の空気など全く気づいていませんでした。
 メンバー全員で息を合わせて歌わねばならない合唱団なのに、この自分本位っぷり!ホントダメな奴です。

<コンサート当日 リハーサル>
 私はぶっつけ本番でオペラシティに足を踏み入れました。女は結婚して子供を産むと怖いもの無しですwww。
 合唱団は、ステージの後方の2階席の部分に、1列に並んで歌う事になっているようでした。目の前には、遥か遠くまで延びた客席が見えます。山の頂上から裾野を眺めているような気分です。
 ステージの上には、私服の社長が!元社長が!ヲノさんが!ライトを受けてキラキラと輝いている明和製品が!私服でリハーサルをしている社長、正道お兄ちゃん、ヲノさんを見るだけでテンションが上がります。
 さて!早速、練習です。まずは、通しで歌ってみる合唱団。歌っている本人達は、大声張り上げて歌っているつもりなんですが、そこは寄せ集めの素人。なかなか声が伸びていないようでした。
 「もっと胸はって!前見て!下に社長がいるから、見たいのはわかるけど!本番では下は見ない!いいね!」客席の後方で見ているサゲヤマさんからも厳しいご指摘。
 合唱団のコーチングは正道お兄ちゃんが張り切って仕切っていました。合唱団各々の立ち位置をバミったり、譜面の持ち方を統一したり、細かい指導を受けて何度か「社歌」を歌い、合唱団のリハーサルは終了。控え室に戻りました。

「リハの様子、少しでも会場で見たいねえ…」
 「肝心の本番は見られないんだしね…」と、思ってしまうのがファン心理。そこをICCのスタッフ、嶋田さんは判ってくれたのでしょう。
 「少しですが、リハーサルの様子を見ますか?」と、粋な計らいをしてくれました。
 会場では、ちょうど「ママは試験管」のリハが終わる所でした。その後に演奏が始ったのが「あれ!これヲノさんのmid night in ea-star!ヲノさんの曲もやるんだ!」
 「はああ〜。客席から見ると、ますますすごい会場だねえ…」
 「パイプオルガンあるしー」
 「おっ!次の曲がはじまった!」
 じんぐるべえ〜〜〜〜〜、じんぐるべえ〜〜〜〜〜、じんぐるべえ〜〜〜〜〜
 …社長、元社長、ヲノさん3人並んで、ボイスビブラータを付けての合唱です。ご本人達はとっても真面目なのですが…
 「なんか、マヌケ〜〜!」
 「笑っちゃうよね」と合唱団員達は、クスクス笑い。お客じゃないので、大声で笑えないのがツライです。
 イチバンステキナ、カラダデイコウ!イチバンステキナ、カラダデイコウ!  …曲に合わせて3人が踊り出します。
 「ヲノさん、ちょっと慣れてない…」
 「あ、ヨコ見てる、ヨコ!」
 「踊りちょっと遅れてる!」
 「がんばれええ〜!ヲノ!」
 と、普段のステージでは、一番踊り慣れていないヲノさんに、合唱団員のツッコミは集中していました。でも、それだけ愛されている、ということで。曲の中盤で、係りの嶋田さんに言われ、会場を後にした合唱団員。「あああ。もっと見ていたいのに…」皆ココロの中で思いつつ、渋々と会場を出ていくのでした。

<コンサート いよいよ本番!>
 「あ〜あ〜。やっぱ合唱団やったの失敗しちゃったかなあ…。」
 「本番、会場で見たいよねえ…」
 控え室のモニターで細々と本番を見ている合唱団員が、ボヤいています。切なくいじらしいファン心理です。
 黒スーツ姿の3人が、モニターに映っています。
 「なんか、作業服じゃないと、明和って感じしないねえ」
 「ヲノさん、似合ってるよね!、元社長は…なんかあやしい芸術家ふう」
 ステージで、淡々と明和製品を説明する社長。
 「こちらの商品は、セーモンズ。このふいごで空気を送り、ゴムの部分を膨らまして、歌を歌います。右からアン、ベティ、クララ。メカ-キャンディーズです。」
 会場----シーン-----
 「うっ!ハズしたね!」
 「結構人、入ってるね」
 「今日の客層は、いつもとは違うね、やっぱり」
 「普通の人が多そ…」(それは、暗に「自分は普通じゃない」と言っているのだが)
 「本日のステージは、エーデルワイスシリーズ、を元に構成されています…」
 最初の曲目「麦の歌」が始りました。ギターラ、セーモンズ、マリンカがフルに稼動するハデな曲です。が!!!
 「あああっ!ギターラ!動いてないよ!」
 「セーモンズ、もっと頑張って歌って!」
 「マリンカ〜〜〜高音出てないよ…」
 「最初からトラブルだね…、がんばれえ〜!社長!」
 「みんなっ!リハでは、ちゃんと動いていたんだよっ!信じてねっ!」
と、会場のお客さんにモニター越しで訴えかける合唱団員達でした。
 
 「さあ、それでは、入ってください!お願いします!」
 係りの嶋田さんがステージへのドアを開けてくれました。合唱団18名プラス工員さん2名は、明和と、大勢のお客さんの待つステージへと足を踏み入れて行きます…。月曜の昼間だというのに、ほぼ満席状態。お客さんの沢山の拍手。暑い位に眩しいライト。拍手が泉からわき上がってくるようにすがすがしく聞こえてきます。
 「本日、このよき日の為に結成された、明和電機合唱団です!」社長が花々しく合唱団員を紹介し、合唱団は、一同、礼! 
 元社長が指揮をとり、社歌の前奏が流れ出します。
 ドッ、ドッ、ドッ、ドッ…。社長のティンパニーが雄々しくリズムを刻み、合唱がはじまりました。
 「あさひにかがやく〜、びるのまち〜、ながれる、ハイウエイ〜、きぼう〜のかなたへ〜…」
 下は見ない!(見たいけど!)上むいて、胸はって!
 「る〜る〜る〜る〜、ひゃくぼ〜るとにかえて〜!すぱーくいっぱつやりにげーーーーー!め・い・わ・で〜ん〜き〜!ーーあーーーあーーーーあーーーーー!」
 元社長の急な追加部分も、なんとか歌いきりました!
 時間にすれば、ほんの4〜5分のステージ。終わってしまうと、あまりにも「あっ」という間の出来事でした。
 ただ、それだけの時間の為に、1ヶ月近く前から合唱団員を募集し、練習会をし、リハーサルをし…。その準備の時が、理屈抜きに、楽しかった! 社長、元社長、ヲノさんと一緒にお客さまにお辞儀をし、沢山の拍手をいただき、ステージを後にしました。

 会場から出てきた合唱団員は、(一応は)緊張していた糸がとけて、口火を切り出します。
 「いやあ〜!やったねえ!」
 「おつかれさまでした!」
 「おつかれ〜!」
 「お客さん、入っていたよね」
 「前の人とかさあ、結構顔がわかるよね」
 「ねえ、緊張した?」
 「いや〜。思っていたよりしなかったなあ。」
 「最後のア〜の部分さあ、出しきれなかったよ」
 「いいっていいって、結果おーらいで」
 係りの嶋田さんが「皆さん、本当にお疲れさまでした。のち程、メンバーとの記念撮影がありますので、着替えはその後にお願いします。写真は、後日みなさんにも送りますので!いい顔で撮ってくださいね。」
 驚喜がピークに達した合唱団員達。
 「うわ〜!やったああ〜!」
 「社長のフォーマル姿も近くで見られるし!」
 「特権!特権!」
 歌う時より気合いが入っていたかもしれません(笑)

<本誌掲載イベント>
2004:11.23 明和電機 ナンセンス=マシーンズ展 お茶の間トーク 昭和40年会 明和電機を叱る!(ページ制作:日野いすゞ)
2004:12.02 明和電機 ナンセンス=マシーンズ展 お茶の間トーク さかなクン魚器シリーズを語る!(ページ制作:日野いすゞ)
2004:12.06 明和電機 東京オペラシティ ランチタイムコンサート
2004:12.24 ミーチ兄弟のロマンチック・コンサート(ページ制作:日野いすゞ)

昭和40年会→
怒涛のICC ナンセンス=マシーンズ展のイベント履歴→
 社長は泊まり込み、ファンは通い詰めの日々でした。記憶が定かではないのですが、展覧会期間中フリーパス券のようなものがあったような…?
 この時明和電機はアーチスト歴11年目。ナンマシ展をきっかけに今までのアンダーグラウンド的な雰囲気を一掃し、濃ゆい特定のファンだけでなく、幅広い年齢層の方々にアピール出来るようになったと思います。
 10年分の同人誌を振り返ると、この展覧会は明和電機にとって大きなターニングポイントだったと改めて思います。そんな記念碑的な展覧会に、当時2歳だった子を連れて初めて親子一緒に明和電機体験できたことは、私にとっては大きな、そして大切な思い出です。

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